インプラント治療には多くの利点がありますが、外科処置である以上、ゼロではないリスクが存在します。ここで大切なのは、怖がることではなく、仕組みを理解して“準備と観察”を丁寧に行うことです。どんなリスクが、どの段階で、なぜ起こり得るのかを知っておくと、無駄に不安を大きくすることなく、必要な一手を迷わず選べます。
今回は、代表的な合併症の正体と、術前・術中・術後それぞれでできる回避策を、はじめての方にもわかりやすい言葉で解説させていただきます。
感染や腫れ、出血は、体が傷を修復する過程で生じる反応と密接に関係しています。ほとんどは適切な清潔管理と安静、服薬で穏やかに経過しますが、糖尿病や喫煙(※血流を悪化させ治癒を遅らせます)などの背景があると長引くことがあります。
神経損傷や上顎洞(※上顎の空洞)への穿孔は、解剖学的な構造とインプラントの位置関係が近いときにリスクが高まります。これは歯科用CT(※三次元画像)で距離を精密に測り、ガイドサージェリー(※計画通りに誘導する補助装置)で角度と深さを再現することで大きく下げられます。
インプラント周囲炎(※インプラント周囲の炎症で、歯周病に似た病態)は、境目にバイオフィルム(※細菌の膜状集合体)が溜まることで静かに進行します。痛みが乏しいまま骨が吸収することがあるため、日々の清掃と定期検診が予防の要になります。
リスクの多くは、術前の情報収集不足、術中の技術的誤差、術後のセルフケア不足という三つの“隙”に由来します。ですから、見える化された診断と計画、手術中の誘導と清潔管理、術後の継続的な観察という三点を丁寧に重ねることが、結果として“想定外”を小さくします。
術前の問診では、既往歴(持病)や服薬、アレルギー、喫煙、生活習慣などを詳しく伺います。特に抗凝固薬、糖尿病、自己免疫疾患は治癒や出血に影響するため、主治医と連携しながら周術期管理を最適化します。
歯科用CTで骨の高さ・厚み、形態、神経や上顎洞との位置関係を三次元で把握します。骨量が不足する部位では、GBR(※骨再生誘導法)やサイナスリフト/ソケットリフト(※上顎洞底挙上術)の適応を慎重に検討し、時期や手順を段階的に設計します。
計画ソフトで埋入位置・角度・長さをミリ単位で検討し、必要に応じてサージカルガイドを作製します。ガイドは万能ではありませんが、術者の判断と併用することで、角度と深さのばらつきを減らし、解剖学的リスク領域から安全距離を保ちやすくなります。
清潔域(※感染を避けるための無菌的環境)を保ち、滅菌器具を使用します。局所麻酔の効きを丁寧に確認し、緊張が強い方には静脈内鎮静(※点滴で鎮静薬を投与してリラックスした状態で受ける方法)を併用します。
骨質に合わせてドリリング速度・トルク・注水量を調整し、初期固定(※埋入直後の機械的安定)を確保します。必要時はピエゾサージェリー(※超音波骨切削装置)を用いて軟組織の損傷を抑えます。
手術は予定を守ることよりも安全を守ることが最優先です。状況により、段階分割や骨造成の先行など方針を柔軟に変更する場合があります。その判断や理由は、術前に共有した目標と合わせて丁寧にご説明します。
術後数日は腫れや痛みが出やすい時期です。冷却と安静、処方薬の内服を守っていただくことで、多くは穏やかに経過します。赤み、出血、膿、嫌なにおい、カチッという異音、噛んだときの鋭い痛み、装置の動きは早期受診のサインです。遠慮なくご連絡ください。
結合期間中は無理な咬合力を避け、仮歯を活用して見た目と発音を支えます。安定後に上部構造(※最終的な人工歯)を装着し、上下の当たりや横方向の干渉を丁寧に調整します。清掃に手が届きにくい形態は微修正し、清掃性と強度、審美性のバランスを取ります。
歯ブラシ、ワンタフトブラシ、デンタルフロス、歯間ブラシを組み合わせ、境目にバイオフィルムをためないことが第一です。うがい薬は補助的にとどめ、過度な使用は粘膜を荒らす恐れがあるため注意します。通院は3〜6か月を目安に、清掃状態や全身状態に応じて調整します。
リスクを正しく理解し、術前の準備、術中の配慮、術後の観察を重ねることで、インプラント治療は安定しやすくなります。怖さを減らす最短ルートは、“何が起こるのか”と“どうすればいいか”をあらかじめ共有することです。疑問や不安は小さなうちに、どうぞ遠慮なく当院にご相談ください。
診療時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
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